CHEMISTRY OF BOOK

化学を学ぶ人のための専門書まとめ

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物理化学の教科書

物理化学(Physical Chemistry)
物理化学は化学の3大分野のひとつにして、専門コースの化学を学び始めた人に痛烈な洗礼を浴びせかける難解な科目。それゆえ、分かりやすく丁寧に記述された教科書が望まれているが、世界の著名な書の多くは、やはり難解なものが多いのが実情。ところで、物理化学はさまざまな分野の科目の“ごった煮”だと考える人がいるかもしれないが、実はそれぞれが綿密につながっていると考えるのが正しい解釈。ミクロ(量子)からマクロ(熱力学)、さらにそれに付随するさまざまな現象論を結びつける一本筋の通った教科書が望ましい。その基本の柱となるのが、「量子化学」と「化学熱力学」。これらの2大分野を基本軸に、ほかの分野が寄り集まって物理化学が成り立つ。ここで紹介するのは定番中の定番といえる名著たち。向き不向きもあるので、自分で実際に手にとって選んでみよう。



アトキンス
物理化学 (第8版)

物理化学のグローバルスタンダード

アトキンス 物理化学〈上〉アトキンス 物理化学〈下〉
アトキンス 物理化学問題の解き方(学生版) 英語版

■出版社/原著出版社
東京化学同人/Oxford University Press

■発行年
2009年

■サイズ
B5(ソフトカバー:上519頁・下456頁・解答547頁)

■レベル
★★★☆☆(学部2~4年)

■ひとこと
物理化学の教科書の代名詞的な存在。邦訳の最新版は第8版で、従来のものよりもカラフルで初めて物理化学に取り組む読者にも配慮している。一方、多くの大学で使われている定番の本だが、過去の版のほうが良かったという声も。というのも式の導出が少しばかり唐突なので、現象を理解するには優れているが厳密性にはやや欠ける。もし厳密な式の取り扱いを求めるなら、マッカーリ・サイモンのほうが優れている。とはいえ、物理化学の諸分野を総ナメするなど、網羅性に優れており、この分野の世界的なスタンダードなのは間違いない。ちなみに原著は第10版が最新の版となっている。なお、解答は全部の問題について掲載されていないので注意したい。



バーロー
物理化学 (第6版)

かつての定番本だった物理化学の名著

バーロー物理化学〈上〉バーロー物理化学〈下〉バーロー物理化学問題の解き方

■出版社/原著出版社
東京化学同人/The McGraw-Hill

■出版年
1999年

■サイズ
A5(ハードカバー:全1010頁・解答336頁)

■レベル
★★★☆☆(学部2~4年)

■ひとこと
アトキンスと肩を並べるほど有名、そして定番のテキストといえばバーロー物理化学である。ただしThe McGraw-Hill(マグロウヒル)から出版されていた原著(Physical Chemistry)の改訂が6版を最後にストップ。ほかにも新しい物理化学の教科書が次々と出版されたため、以前ほどの知名度はないかもしれない。しかし第4版辺りまでの邦訳版は訳が悪評だったものの、最新の第6版は内容、レイアウトとともに洗練されているので今でも十分有用な本。とりわけ電気化学が詳しめに収録されているのが特徴。アトキンスに馴染めない人にもおすすめ。手堅い、昔ながらの物理化学の教科書である。



マッカーリ・サイモン
物理化学 分子論的アプローチ (初版)

量子化学の分かりやすさが随一の新星

物理化学―分子論的アプローチ〈上〉物理化学―分子論的アプローチ〈下〉


■出版社/原著出版社
東京化学同人/Univ Science Books

■出版年
1999年・2000年

■サイズ
A5(ハードカバー:上666頁・下670頁)

■レベル
★★★☆☆(学部2~4年)

■ひとこと
今もっとも人気の高い物理化学の教科書がこれ。記述の詳しさに定評があり、とくに上巻は量子化学と分光学に重点を絞って解説。下手な量子化学専門の教科書よりもずっと詳しい。難解な量子化学をここまで丁寧に解説した本は少ないので、非常に貴重な存在と言えよう。数学のトピックスも、各章のあいだに適時挟みこまれ、非常に教育的で、初学者に優しい物理化学の教科書である。章末問題の解答は、別売りの洋書(Problems & Solutions to Accompany McQuarrie - Simon Physical Chemistry: A Molecular Approach)を手に入れなくてはいけない。



Atkins'
Physical Chemistry (第10版)

スタンダード本こそ原著で読みたいと思うあなたに

Atkins' Physical ChemistryStudent Solutions Manual to Accompany Atkins' Physical Chemistry

■出版社
Oxford University Press

■発行年
2014年

■サイズ
27.4×21.8×3.6 cm (ペーパーバック:1040頁)

■レベル
★★★☆☆(学部2~4年)

■ひとこと
アトキンス物理化学の原著最新版(10版)がこちら。教育的な記述ゆえ比較的読みやすい英語なので、学部2~3年生でも十分チャレンジできるレベルだ。自信があればぜひこちらの原著を手にとって見るのも悪くない。章立ての順序も、単なる諸分野の寄せ集めではなくこれは「物理化学」というひとつの学問体系を構築しているのだと改めて思わせてくれる。邦訳よりも版が新しく価格が安いのもメリットだろう。



Principles of
Physical Chemistry (第2版)

物理化学を広く学べる新しいグローバルスタンダード

Principles of Physical ChemistrySolutions Manual for Principles of Physical Chemistry

■出版社
Wiley-Interscience

■発行年
2009年

■サイズ
25.0×18.3×4.8 cm(ハードカバー:1084頁)

■レベル
★★★☆☆(学部2~4年)

■ひとこと
日本では丸善から邦訳版(クーン・フェルスターリンク物理化学(1)原子・分子・分子間力(2)平衡と反応・分子組織系・生命の起源)が出ていたが、現在は絶版となってしまった。その原著第2版がこれ。基礎から発展的な内容まで網羅されている。記述が詳しくて分かりやすいのが特徴。また電気化学や固体など、取り扱いの範囲が広くて網羅的なのもメリットのひとつ。日本ではアトキンスやマッカーリ・サイモンがメジャーだが、アメリカでは非常に有名な物理化学のテキストである。こちらもかなりオススメの1冊だ。



評価の高いその他の名著
ムーア物理化学 (上)
ムーア物理化学 (下)
ムーア物理化学問題の解き方
ムーアは物理化学の古典と言える本で、化学熱力学が詳しい。やや高度な内容なので第一選択肢にはならないが、2冊目の本または参考図書として利用価値がある。ただ、全体的に古いのが難か……。持っていて損はないのだが。

ほかには…
ボール物理化学〈上〉
ボール物理化学〈下〉
比較的ページ数が少ない物理化学の教科書は国産のものでも豊富だが、専門課程向けの本格的な本で新書で買えるものとなると、上記で紹介したものしかない。そのなかでもボール物理化学は、レイアウトが見やすく評判も上々のようだ。


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化学熱力学の教科書

化学熱力学(Chemical Thermodynamics)
化学熱力学は、物理化学のなかの重要な一分野。その根幹となるのは熱力学や統計力学であり、それを化学へ応用して物質やエネルギーの変化を研究しようという学問である。化学の諸分野のなかでは古典的で新しいトピックスは比較的少なく、現在において完成された学問とも言える。しかし今でも新しいテキストが生まれているのは、それだけ重要度が高いということ。 化学熱力学は、ほぼすべての物理化学の教科書で取り扱われるので、別な成書を用意する必要性は少ないかもしれないが、教科書によっては表現がわかりにくいこともあるので、参考図書として手元にあると役に立つはず。



Chemical Thermodynamics (第7版)
化学熱力学を基礎から応用まで学べるスタンダード

Chemical Thermodynamics: Basic Concepts and Methods

■出版社/原著出版社
Wiley-Interscience

■発行年
1994年

■サイズ
24.2×16.5×3.9 cm (ハードカバー:586頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
昔からある化学熱力学の大著。基礎の考え方から方法論までかなり詳しく書いてある手堅い1冊。物理化学の教科書でひととおり化学熱力学を学んだ人が、もう一度知識を整理するのに役立つ。物理化学の研究室で、関連の研究をする院生や研究者にも座右の著となるはず。



評価の高いその他の名著
熱力学―現代的な視点から (新物理学シリーズ)
物理学コース向けだが、化学コースの学生も一読の価値がある。まさに熱力学の名著。

化学熱力学
原田先生が書いた化学熱力学で、こちらも非常に有名な一冊。つまづいたと思ったら、ぜひ手に取ってみよう。化学熱力学がより深く理解できることだろう。

熱力学要論―分子論的アプローチ
統計熱力学について詳細に取り扱っている。初学者にも分かりやすい記述の和書なので、非常にオススメ。

量子化学の教科書

量子化学(Quantum Chemistry)
化学コースの学生にとって、量子化学を習得することは、超えるべき大きなハードルのひとつ。量子力学を、化学(原子や分子の構造・性質の解明)に応用したものが量子化学(または分子量子力学)だが、数式が大量に出てきて苦手意識を持つ人が多いもの。大抵の物理化学の教科書には必ず記述される分野なのだが、説明が不十分な書も少なくない。また、量子化学と銘打ったテキストでも、落胆させるような不出来な本も数多く存在するのが実情。
そんな現状に一石を投じたのが、本ブログの「物理化学の教科書」で紹介した「マッカーリ・サイモン物理化学」。この教科書の上巻は、ほぼすべてが量子化学の解説に当てられており、説明も極めて詳細なので1999年に邦訳版が発売されて以来、絶大なる支持を獲得してきた。初歩の量子化学ならばそれで十分だが、ここでは、その次に読むべき発展的な内容を含んだ量子化学テキストを紹介しよう。



Methods of
Molecular Quantum Mechanics (第1版)

やや上級向けの総合的な量子化学テキスト

Methods of Molecular Quantum Mechanics: An Introduction to Electronic Molecular Structure

■出版社
Wiley

■発行年
2009年

■サイズ
23.7×16×2.4 cm(ハードカバー:298頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
物理化学で取り扱われる量子化学を一通りマスターした人が読む上級テキスト。ハートリーフォック法に代わるより精度の高いMP2理論などにも触れている。修士1年レベルの内容に触れたいならオススメだ。



評価の高いその他の名著
量子化学―基本の考え方16章
入門書のさらに入門といった内容の本。物理化学で本格的な量子化学を学ぶ前に読んでおけば、理解はよりスムーズになるはず。難しいところは思い切って省き、重要なところを丁寧に解説。ただ、ページ数も少ないので到達点は低い。

量子化学―基礎からのアプローチ
上で紹介した「16章」よりも上位の内容だが、これもあくまで入門書。解説は詳しいので、比較的とりかかりやすいのが魅力である。これと、アトキンスやマッカーリ・サイモンを併用すれば、より理解が深まるはず。

量子化学 上巻
量子化学 下巻
日本人の著者(原田先生)が書いた数少ない量子化学の成書。上下分冊になっており、内容も充実している。到達点は、物理化学の教科書よりもやや高い。

初等量子化学―その計算と理論
大岩先生の非常に有名な本。初等とあるとおり量子化学の入門書であるが、式の導出からHF理論、ヒュッケル則の説明など重要なところは押さえてある。こちらもアトキンスやマッカーリの前に一読しておきたい1冊。

詳解 量子化学の基礎
東京電機大学の類家先生という方(まだお若い人)が書いた本。最近出版されたもので、本屋で立ち読みした範囲での印象だが、数式の変形がかなり丁寧だと感じた。学術書というより、先輩の講義ノートのような親しみを感じさせる1冊。この先生は界面化学がご専門のようで、彼のウェブサイトを見ると、界面化学のテキストもアップされている。教育への情熱が感じられる新世代の量子化学テキストと言えるかもしれない。

Modern Quantum Chemistry
専門の人には「ザボ」の名前で親しまれている典型的な量子化学のテキスト。計算化学の基礎固めにはもってこいの本。出版元はDOVERなので、非常に安く買えるのも嬉しい。邦訳版は 東京大学出版会から「新しい量子化学(上)」「新しい量子化学(下)」と分冊で出ているが、価格が高いのでできれば原著をオススメしたい。物理化学のテキストで基礎の量子化学を学んだ後の2冊目の本として有用だ。

反応速度論の教科書

反応速度論(Chemical Kinetics)
物理化学の一分野である反応速度論は、物質の反応速度、衝突理論、遷移状態理論などを分子レベルで論じる学問である。最近は化学反応の実態を研究する「分子動力学(Molecular Dynamics)」とも密接に関わり、多くの場合、これも包括して語られる。ただし非常に難解な分野ゆえ、一般の物理化学のテキストではあまり突っ込んだところには触られないことが多い。反応速度論や反応動力学に関する本は、物理化学の教科書を除けばあまり数が多くない。ここでは数少ない世界的な成書を紹介していこう。



An Introduction to
Chemical Kinetics (第1版)

最新の反応速度論を基礎から学べる1冊

An Introduction to Chemical Kinetics

■出版社
Wiley-ISTE

■発行年
2011年

■サイズ
24.1×16.3×3.0 cm(ハードカバー:480頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
誰もがつまづく反応速度論を、基礎からわかりやすく解説しているのがこの本。連鎖反応、化学量論的反応、触媒などにも幅広く触れているのが特徴。




評価の高いその他の名著
反応速度論
薄い本だが、非常に有名。扱ってる内容は少ないが、比較的高度な内容なので物理化学の教科書と合わせて読みたい。

分子反応動力学
こちらは世界的に有名な反応動力学の本の邦訳版(丸善)。かなり詳しいが、初学者には少し難しい。ただ、このような専門書籍を日本語で読めるのはありがたい。

電気化学の教科書

電気化学(Electrochemistry)
電気化学も物理化学の一分野として扱われる学問。太陽電池、リチウム水素電池など工業分野への応用も盛んな、非常に実用的な学問である。海外の教科書はさまざまな本が出版されているが、和書では初学者向けの薄い本ばかりで、分量のある本格的な教科書は極めて少ない。しかも、物理化学でもあまり取り扱われないこともあり、たとえ化学コースを出たとしても、電気化学を学んだことがない……という人も少なくないだろう。ここでは電気化学を基礎からしっかり学べる、中級~上級の教科書を紹介する。



Fundamentals of
Electrochemistry (第2版)

学部から修士および研究者まで広い読者を想定したテキスト

Fundamentals of Electrochemistry (The ECS Series of Texts and Monographs)

■出版社
Wiley

■発行年
2005年

■サイズ
23.9×16.4×4.3 cm(ハードカバー:752頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
こちらは最近有名になってきた電気化学を広くまとめた教科書。基礎から応用までしっかりと学べるので、物理化学で電気化学を学べなかった人が手に取るのに適している。ただ分量が多く通読するのは大変かもしれない。電気化学が専門で、じっくりと学べる時間がある人向けの本である。



評価の高いその他の名著
エッセンシャル電気化学
電気化学の権威、玉虫教授が書いたコンパクトな教科書。ページ数は少ないが、エッセンスはぎっしり詰められてる。電気化学を学ぶならこの本から始めよう。

電子移動の化学―電気化学入門 (化学者のための基礎講座)
amazonで評判のよい電気化学の本。

Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications
Electrochemical Methods - Fundamentals & Applications Student Solutions Manual
電気化学のバイブルと言われる本。基礎理論から応用まで幅広く載っている。やや古典的な本だが、今でも十分使えるだろう。電気化学の和書はこの本を参考にして書かれていると言われている。解答編と合わせて一通り目を通しておきたい。

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