CHEMISTRY OF BOOK

化学を学ぶ人のための専門書まとめ

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一般化学の教科書

一般化学(General chemistry)
一般化学という言葉は教育現場で使われるもので、化学の諸分野のひとつに含まれるものではない。だからと言って、初めて化学を学ぼうとする人が、いきなり物理化学、有機化学…など専門のテキストに取り組んでも、高いハードルを感じてしまうことだろう。たとえば、モルなどの化学量論的な考え方、周期表の見方、化学結合の基本、原子構造の基本、化学実験の取り組み方などは、すべての化学に通ずる基礎中の基礎となるもので、それを事前に学んでおこうというのが、一般化学の役割なのだ。

一般化学の教科書では、物理、無機、有機、分析、生化学のエッセンスがまんべんなく盛り込まれているものが多く、1冊で化学の基礎全体を広く学べるのが特徴。最近の本は図や表が豊富で、カラフルなのも大きな特色。専門分野の本にありがちな堅苦しさがなく、化学の楽しさ、親しみやすさに触れられることも選ぶ上で重要なポイント。化学が専門か否かは問わず、現代を生きる社会人の教養として、1冊書棚に置いておきたいもの。



Chemistry:
The Molecular Nature of Matter (第7版)

名著「ブラディ化学」の原著最新版

Chemistry: The Molecular Nature of Matter

■出版社
Wiley

■発行年
2014年

■サイズ
27.7×22.4×4.6 cm(ハードカバー:1200頁)

■レベル
★★☆☆☆(学部1年~学部2年)

■ひとこと
邦訳され、昔から日本でも広く使われた一般化学の名著「ブラディ化学(上)(下)」。原著では改訂が進み、現在は2014年1月に出版された第7版が最新版。ただし、ブラディは今回より著者リストから外れている。図も豊富で読みやすく、高校化学から大学化学への橋渡しにぴったり。世界で多大なる支持を得ているのも納得できる本である。



評価の高いその他の名著
マクマリー 一般化学 〈上〉
マクマリー 一般化学 〈下〉
マクマリー 一般化学 演習編
有機化学の教科書で有名なマクマリーが著する一般化学の教科書。邦訳されている一般化学の本のなかでは、おそらくこれがベスト。わかりやすい丁寧な解説、写真が豊富で直感的に理解しやすい、演習問題の解答がある……などが理由。大学入学前の高校生~大学1年生、化学を専門としない理系学生、化学に興味がある社会人が読者対象であろう。


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物理化学の教科書

物理化学(Physical Chemistry)
物理化学は化学の3大分野のひとつにして、専門コースの化学を学び始めた人に痛烈な洗礼を浴びせかける難解な科目。それゆえ、分かりやすく丁寧に記述された教科書が望まれているが、世界の著名な書の多くは、やはり難解なものが多いのが実情。ところで、物理化学はさまざまな分野の科目の“ごった煮”だと考える人がいるかもしれないが、実はそれぞれが綿密につながっていると考えるのが正しい解釈。ミクロ(量子)からマクロ(熱力学)、さらにそれに付随するさまざまな現象論を結びつける一本筋の通った教科書が望ましい。その基本の柱となるのが、「量子化学」と「化学熱力学」。これらの2大分野を基本軸に、ほかの分野が寄り集まって物理化学が成り立つ。ここで紹介するのは定番中の定番といえる名著たち。向き不向きもあるので、自分で実際に手にとって選んでみよう。



アトキンス
物理化学 (第8版)

物理化学のグローバルスタンダード

アトキンス 物理化学〈上〉アトキンス 物理化学〈下〉
アトキンス 物理化学問題の解き方(学生版) 英語版

■出版社/原著出版社
東京化学同人/Oxford University Press

■発行年
2009年

■サイズ
B5(ソフトカバー:上519頁・下456頁・解答547頁)

■レベル
★★★☆☆(学部2~4年)

■ひとこと
物理化学の教科書の代名詞的な存在。邦訳の最新版は第8版で、従来のものよりもカラフルで初めて物理化学に取り組む読者にも配慮している。一方、多くの大学で使われている定番の本だが、過去の版のほうが良かったという声も。というのも式の導出が少しばかり唐突なので、現象を理解するには優れているが厳密性にはやや欠ける。もし厳密な式の取り扱いを求めるなら、マッカーリ・サイモンのほうが優れている。とはいえ、物理化学の諸分野を総ナメするなど、網羅性に優れており、この分野の世界的なスタンダードなのは間違いない。ちなみに原著は第10版が最新の版となっている。なお、解答は全部の問題について掲載されていないので注意したい。



バーロー
物理化学 (第6版)

かつての定番本だった物理化学の名著

バーロー物理化学〈上〉バーロー物理化学〈下〉バーロー物理化学問題の解き方

■出版社/原著出版社
東京化学同人/The McGraw-Hill

■出版年
1999年

■サイズ
A5(ハードカバー:全1010頁・解答336頁)

■レベル
★★★☆☆(学部2~4年)

■ひとこと
アトキンスと肩を並べるほど有名、そして定番のテキストといえばバーロー物理化学である。ただしThe McGraw-Hill(マグロウヒル)から出版されていた原著(Physical Chemistry)の改訂が6版を最後にストップ。ほかにも新しい物理化学の教科書が次々と出版されたため、以前ほどの知名度はないかもしれない。しかし第4版辺りまでの邦訳版は訳が悪評だったものの、最新の第6版は内容、レイアウトとともに洗練されているので今でも十分有用な本。とりわけ電気化学が詳しめに収録されているのが特徴。アトキンスに馴染めない人にもおすすめ。手堅い、昔ながらの物理化学の教科書である。



マッカーリ・サイモン
物理化学 分子論的アプローチ (初版)

量子化学の分かりやすさが随一の新星

物理化学―分子論的アプローチ〈上〉物理化学―分子論的アプローチ〈下〉


■出版社/原著出版社
東京化学同人/Univ Science Books

■出版年
1999年・2000年

■サイズ
A5(ハードカバー:上666頁・下670頁)

■レベル
★★★☆☆(学部2~4年)

■ひとこと
今もっとも人気の高い物理化学の教科書がこれ。記述の詳しさに定評があり、とくに上巻は量子化学と分光学に重点を絞って解説。下手な量子化学専門の教科書よりもずっと詳しい。難解な量子化学をここまで丁寧に解説した本は少ないので、非常に貴重な存在と言えよう。数学のトピックスも、各章のあいだに適時挟みこまれ、非常に教育的で、初学者に優しい物理化学の教科書である。章末問題の解答は、別売りの洋書(Problems & Solutions to Accompany McQuarrie - Simon Physical Chemistry: A Molecular Approach)を手に入れなくてはいけない。



Atkins'
Physical Chemistry (第10版)

スタンダード本こそ原著で読みたいと思うあなたに

Atkins' Physical ChemistryStudent Solutions Manual to Accompany Atkins' Physical Chemistry

■出版社
Oxford University Press

■発行年
2014年

■サイズ
27.4×21.8×3.6 cm (ペーパーバック:1040頁)

■レベル
★★★☆☆(学部2~4年)

■ひとこと
アトキンス物理化学の原著最新版(10版)がこちら。教育的な記述ゆえ比較的読みやすい英語なので、学部2~3年生でも十分チャレンジできるレベルだ。自信があればぜひこちらの原著を手にとって見るのも悪くない。章立ての順序も、単なる諸分野の寄せ集めではなくこれは「物理化学」というひとつの学問体系を構築しているのだと改めて思わせてくれる。邦訳よりも版が新しく価格が安いのもメリットだろう。



Principles of
Physical Chemistry (第2版)

物理化学を広く学べる新しいグローバルスタンダード

Principles of Physical ChemistrySolutions Manual for Principles of Physical Chemistry

■出版社
Wiley-Interscience

■発行年
2009年

■サイズ
25.0×18.3×4.8 cm(ハードカバー:1084頁)

■レベル
★★★☆☆(学部2~4年)

■ひとこと
日本では丸善から邦訳版(クーン・フェルスターリンク物理化学(1)原子・分子・分子間力(2)平衡と反応・分子組織系・生命の起源)が出ていたが、現在は絶版となってしまった。その原著第2版がこれ。基礎から発展的な内容まで網羅されている。記述が詳しくて分かりやすいのが特徴。また電気化学や固体など、取り扱いの範囲が広くて網羅的なのもメリットのひとつ。日本ではアトキンスやマッカーリ・サイモンがメジャーだが、アメリカでは非常に有名な物理化学のテキストである。こちらもかなりオススメの1冊だ。



評価の高いその他の名著
ムーア物理化学 (上)
ムーア物理化学 (下)
ムーア物理化学問題の解き方
ムーアは物理化学の古典と言える本で、化学熱力学が詳しい。やや高度な内容なので第一選択肢にはならないが、2冊目の本または参考図書として利用価値がある。ただ、全体的に古いのが難か……。持っていて損はないのだが。

ほかには…
ボール物理化学〈上〉
ボール物理化学〈下〉
比較的ページ数が少ない物理化学の教科書は国産のものでも豊富だが、専門課程向けの本格的な本で新書で買えるものとなると、上記で紹介したものしかない。そのなかでもボール物理化学は、レイアウトが見やすく評判も上々のようだ。


化学熱力学の教科書

化学熱力学(Chemical Thermodynamics)
化学熱力学は、物理化学のなかの重要な一分野。その根幹となるのは熱力学や統計力学であり、それを化学へ応用して物質やエネルギーの変化を研究しようという学問である。化学の諸分野のなかでは古典的で新しいトピックスは比較的少なく、現在において完成された学問とも言える。しかし今でも新しいテキストが生まれているのは、それだけ重要度が高いということ。 化学熱力学は、ほぼすべての物理化学の教科書で取り扱われるので、別な成書を用意する必要性は少ないかもしれないが、教科書によっては表現がわかりにくいこともあるので、参考図書として手元にあると役に立つはず。



Chemical Thermodynamics (第7版)
化学熱力学を基礎から応用まで学べるスタンダード

Chemical Thermodynamics: Basic Concepts and Methods

■出版社/原著出版社
Wiley-Interscience

■発行年
1994年

■サイズ
24.2×16.5×3.9 cm (ハードカバー:586頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
昔からある化学熱力学の大著。基礎の考え方から方法論までかなり詳しく書いてある手堅い1冊。物理化学の教科書でひととおり化学熱力学を学んだ人が、もう一度知識を整理するのに役立つ。物理化学の研究室で、関連の研究をする院生や研究者にも座右の著となるはず。



評価の高いその他の名著
熱力学―現代的な視点から (新物理学シリーズ)
物理学コース向けだが、化学コースの学生も一読の価値がある。まさに熱力学の名著。

化学熱力学
原田先生が書いた化学熱力学で、こちらも非常に有名な一冊。つまづいたと思ったら、ぜひ手に取ってみよう。化学熱力学がより深く理解できることだろう。

熱力学要論―分子論的アプローチ
統計熱力学について詳細に取り扱っている。初学者にも分かりやすい記述の和書なので、非常にオススメ。

量子化学の教科書

量子化学(Quantum Chemistry)
化学コースの学生にとって、量子化学を習得することは、超えるべき大きなハードルのひとつ。量子力学を、化学(原子や分子の構造・性質の解明)に応用したものが量子化学(または分子量子力学)だが、数式が大量に出てきて苦手意識を持つ人が多いもの。大抵の物理化学の教科書には必ず記述される分野なのだが、説明が不十分な書も少なくない。また、量子化学と銘打ったテキストでも、落胆させるような不出来な本も数多く存在するのが実情。
そんな現状に一石を投じたのが、本ブログの「物理化学の教科書」で紹介した「マッカーリ・サイモン物理化学」。この教科書の上巻は、ほぼすべてが量子化学の解説に当てられており、説明も極めて詳細なので1999年に邦訳版が発売されて以来、絶大なる支持を獲得してきた。初歩の量子化学ならばそれで十分だが、ここでは、その次に読むべき発展的な内容を含んだ量子化学テキストを紹介しよう。



Methods of
Molecular Quantum Mechanics (第1版)

やや上級向けの総合的な量子化学テキスト

Methods of Molecular Quantum Mechanics: An Introduction to Electronic Molecular Structure

■出版社
Wiley

■発行年
2009年

■サイズ
23.7×16×2.4 cm(ハードカバー:298頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
物理化学で取り扱われる量子化学を一通りマスターした人が読む上級テキスト。ハートリーフォック法に代わるより精度の高いMP2理論などにも触れている。修士1年レベルの内容に触れたいならオススメだ。



評価の高いその他の名著
量子化学―基本の考え方16章
入門書のさらに入門といった内容の本。物理化学で本格的な量子化学を学ぶ前に読んでおけば、理解はよりスムーズになるはず。難しいところは思い切って省き、重要なところを丁寧に解説。ただ、ページ数も少ないので到達点は低い。

量子化学―基礎からのアプローチ
上で紹介した「16章」よりも上位の内容だが、これもあくまで入門書。解説は詳しいので、比較的とりかかりやすいのが魅力である。これと、アトキンスやマッカーリ・サイモンを併用すれば、より理解が深まるはず。

量子化学 上巻
量子化学 下巻
日本人の著者(原田先生)が書いた数少ない量子化学の成書。上下分冊になっており、内容も充実している。到達点は、物理化学の教科書よりもやや高い。

初等量子化学―その計算と理論
大岩先生の非常に有名な本。初等とあるとおり量子化学の入門書であるが、式の導出からHF理論、ヒュッケル則の説明など重要なところは押さえてある。こちらもアトキンスやマッカーリの前に一読しておきたい1冊。

詳解 量子化学の基礎
東京電機大学の類家先生という方(まだお若い人)が書いた本。最近出版されたもので、本屋で立ち読みした範囲での印象だが、数式の変形がかなり丁寧だと感じた。学術書というより、先輩の講義ノートのような親しみを感じさせる1冊。この先生は界面化学がご専門のようで、彼のウェブサイトを見ると、界面化学のテキストもアップされている。教育への情熱が感じられる新世代の量子化学テキストと言えるかもしれない。

Modern Quantum Chemistry
専門の人には「ザボ」の名前で親しまれている典型的な量子化学のテキスト。計算化学の基礎固めにはもってこいの本。出版元はDOVERなので、非常に安く買えるのも嬉しい。邦訳版は 東京大学出版会から「新しい量子化学(上)」「新しい量子化学(下)」と分冊で出ているが、価格が高いのでできれば原著をオススメしたい。物理化学のテキストで基礎の量子化学を学んだ後の2冊目の本として有用だ。

反応速度論の教科書

反応速度論(Chemical Kinetics)
物理化学の一分野である反応速度論は、物質の反応速度、衝突理論、遷移状態理論などを分子レベルで論じる学問である。最近は化学反応の実態を研究する「分子動力学(Molecular Dynamics)」とも密接に関わり、多くの場合、これも包括して語られる。ただし非常に難解な分野ゆえ、一般の物理化学のテキストではあまり突っ込んだところには触られないことが多い。反応速度論や反応動力学に関する本は、物理化学の教科書を除けばあまり数が多くない。ここでは数少ない世界的な成書を紹介していこう。



An Introduction to
Chemical Kinetics (第1版)

最新の反応速度論を基礎から学べる1冊

An Introduction to Chemical Kinetics

■出版社
Wiley-ISTE

■発行年
2011年

■サイズ
24.1×16.3×3.0 cm(ハードカバー:480頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
誰もがつまづく反応速度論を、基礎からわかりやすく解説しているのがこの本。連鎖反応、化学量論的反応、触媒などにも幅広く触れているのが特徴。




評価の高いその他の名著
反応速度論
薄い本だが、非常に有名。扱ってる内容は少ないが、比較的高度な内容なので物理化学の教科書と合わせて読みたい。

分子反応動力学
こちらは世界的に有名な反応動力学の本の邦訳版(丸善)。かなり詳しいが、初学者には少し難しい。ただ、このような専門書籍を日本語で読めるのはありがたい。

電気化学の教科書

電気化学(Electrochemistry)
電気化学も物理化学の一分野として扱われる学問。太陽電池、リチウム水素電池など工業分野への応用も盛んな、非常に実用的な学問である。海外の教科書はさまざまな本が出版されているが、和書では初学者向けの薄い本ばかりで、分量のある本格的な教科書は極めて少ない。しかも、物理化学でもあまり取り扱われないこともあり、たとえ化学コースを出たとしても、電気化学を学んだことがない……という人も少なくないだろう。ここでは電気化学を基礎からしっかり学べる、中級~上級の教科書を紹介する。



Fundamentals of
Electrochemistry (第2版)

学部から修士および研究者まで広い読者を想定したテキスト

Fundamentals of Electrochemistry (The ECS Series of Texts and Monographs)

■出版社
Wiley

■発行年
2005年

■サイズ
23.9×16.4×4.3 cm(ハードカバー:752頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
こちらは最近有名になってきた電気化学を広くまとめた教科書。基礎から応用までしっかりと学べるので、物理化学で電気化学を学べなかった人が手に取るのに適している。ただ分量が多く通読するのは大変かもしれない。電気化学が専門で、じっくりと学べる時間がある人向けの本である。



評価の高いその他の名著
エッセンシャル電気化学
電気化学の権威、玉虫教授が書いたコンパクトな教科書。ページ数は少ないが、エッセンスはぎっしり詰められてる。電気化学を学ぶならこの本から始めよう。

電子移動の化学―電気化学入門 (化学者のための基礎講座)
amazonで評判のよい電気化学の本。

Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications
Electrochemical Methods - Fundamentals & Applications Student Solutions Manual
電気化学のバイブルと言われる本。基礎理論から応用まで幅広く載っている。やや古典的な本だが、今でも十分使えるだろう。電気化学の和書はこの本を参考にして書かれていると言われている。解答編と合わせて一通り目を通しておきたい。

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界面・コロイド化学の教科書

界面・コロイド化学(Interface and Colloid Chemistry)
物理化学には界面(Interface)、表面(Surface)、コロイド(colloid)……これらを一元化した学問領域がある。一般的な物理化学のテキストでは、ほとんど触れていないものも多いが、医薬品、化粧品、触媒開発とも密接に結びつく重要な分野である。これらを取り扱った一般的なテキストの数はあまり多くない。とくに和書では入門書程度のものしかないのが現状。それゆえ、化学コースの学生でも習熟が不十分なことも多い。ここでは世界的に有名な「界面」「表面」「コロイド」をまとめた教科書を紹介していこう。



Surfaces, Interfaces, and Colloids (第2版)
表面・界面・コロイドについて丁寧に解説したテキスト

Surfaces, Interfaces, and Colloids: Principles and Applications

■出版社
Wiley-VCH

■発行年
1999年

■サイズ
23.9×16.2×2.9 cm(ハードカバー:528頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
界面・表面・コロイド化学の世界的に有名なテキスト。取り扱う範囲は広く、この本でこの分野の基礎知識が一通り学べる。やや古い本だが、これに代わる本はあまり存在しない。かなりおすすめできる1冊だ。




評価の高いその他の名著
コロイド科学: 基礎と応用
コロイド化学の入門にはもってこいの良書なので、非常にオススメ。

界面・コロイド化学の基礎 (KS化学専門書)
界面化学のアウトラインを俯瞰するのに役立つ本。上で紹介した本格的な洋書は、詳細であるが読むのには大変骨が折れる。物理化学のテキストのサポートとして使うにはちょうどいい分量だ。

分子間力と表面力
世界で好評な界面化学の大著「Intermolecular and Surface Forces」の最新邦訳版が朝倉書店より刊行された。界面化学分野が専門なら目を通しておくといいかもしれない。


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核化学の教科書

核化学(Nuclear Chemistry)
原子核反応を論じる学問が核化学(Nuclear Chemistry)または放射化学(Radiochemistry)である。どちらもほぼ同義で使われることが多い。化学コースを出ていても、あまり学習する機会が少ないかもしれないが、超ウラン元素の性質や新元素の合成など、比較的先端のトピックスが多いのもこの分野の特徴。化学としての和書はあまり多くなく、専門的に学ぶとなると、やはり洋書になってしまうだろう。



Modern Nuclear Chemistry
核化学のバイブルと言えるグローバルスタンダード

Modern Nuclear Chemistry
Modern Nuclear Chemistry


■出版社
Wiley

■発行年
2001年(※2016年改訂予定)

■サイズ
24.4×16.3×3.8 cm(ハードカバー:704頁 ※初版)

■レベル
★★★★★(学部4年~研究者)

■ひとこと
世界でも数少ない核化学の専門書で、かなり詳細に記述されている。2016年に改訂版が出版される予定。



評価の高いその他の名著
現代放射化学
核・放射化学についてコンパクトにまとめた本。分量が少ないので、さっと基礎知識を付けたい人にオススメできる。


無機化学の教科書

無機化学(Inorganic Chemistry)
無機化学の教科書の内容は、化学結合理論や無機結晶、金属錯体などについて考察をしていく総論と、各化合物の性質を学んでいく各論に大別できる。このバランスが各教科書によってバラバラだが、初学者は総論寄りの本から学んでいくのがベターだろう。各論は有機化学に比べて範囲が非常に広く、おそらく一度読んだだけで頭にすべて叩き込むのは難しいはず。まずは最初に使った教科書を読み込み、ある程度頭の中にインデックスをつけておいて、必要に応じて再度調べていけばおのずと理解が深まっていくだろう。有機化学に比べて書籍の数は少なく、定番の本はごく限られている。まずは自分にあった1冊を徹底的に学習していこう。



シュライバー・アトキンス
無機化学 (第4版)

世界で広く読まれる無機化学のスタンダードな教科書

シュライバー・アトキンス 無機化学〈上〉シュライバー・アトキンス 無機化学〈下〉

■出版社/原著出版社
東京化学同人/Oxford University Press

■発行年
2008年

■サイズ
A5(ハードカバー:全1296頁)

■レベル
★★★☆☆(学部2~4年)

■ひとこと
世界的に有名な無機化学の教科書。個人的にいろいろと読み比べてみたが、とりあえず邦訳されている本のなかではこれがベストと思われる。ページ構成もカラフルで、総論、各論の配分が適切(やや総論寄りだが学部向けにはこれくらいがちょうどよい)。とくに、第19章のdブロック金属錯体の電子構造については、類を見ないほど丁寧かつ簡潔に書かれている。すでに原著は第6版が出ているので早めの改訂が望まれているが、この第4版でも大きな問題はない。中級以上の教科書なので通読するのはやや大変だが、無機化学を基礎からきっちりと固めたい人はこれ一択となるだろう。



Inorganic Chemistry (第6版)
最新のトピックスも盛り込んだシュライバーの最新版

Inorganic Chemistry

■出版社
Oxford University Press

■発行年
2014年

■サイズ
27.4×21.8×3.2 cm(ペーパーバック:912頁)

■レベル
★★★☆☆(学部2~4年)

■ひとこと
上で紹介したシュライバー・アトキンス無機化学の原著が改訂された(現在は邦訳より2つ版が進んでいる)。今回からシュライバーの名前が落とされ、アトキンス博士ほか数名の著者が監修するスタイルとなったようだ。しかしながら、無機化学テキストのグローバルスタンダードであることは変わらない。こういう本を、学部の時代からコツコツと読んでいけば院に上がったときに相当な力となっているはず。英語も同時に学びたい人はぜひチャレンジを!



Basic Inorganic Chemistry (第3版)
シュライバーと双璧をなすもうひとつのスタンダード、通称「コットン基礎」

Basic Inorganic ChemistryBasic Inorganic Chemistry, Solutions Manual

■出版社
John Wiley & Sons Inc

■発行年
1994年

■サイズ
25.8×18.5×3.6 cm(ハードカバー:856頁)

■レベル
★★★☆☆(学部2~4年)

■ひとこと
「コットン・ウィルキンソン・ガウス基礎無機化学」として日本では培風館から邦訳第3版(基礎無機化学)が出ているが、訳がいまいち良くないので最新の原著を読むことを推奨する。また原著には章末問題の解答編も存在する。ちなみにタイトルにBasic(基礎)とあるが、これは易しいという意味ではなく、総論的な記述が多いことを示している。とくに配位子場理論などdブロック元素特有の理論や錯体反応について丁寧な記述があるのが特徴で、有機金属や生物無機化学に関するトピックも充実。学部レベルの講義や院試に向けた勉強ならこれ1冊で十分だろう。化学が専門なら、無機化学の教科書はシュライバー・アトキンスかこちらかの選択となるのではないだろうか。そしてこれをマスターしたら、下で紹介する「Advanced Inorganic Chemistry」を手に取ってみよう。



Advanced Inorganic Chemistry (第6版)
各元素についての記述が詳しい無機化学テキストの最高峰

Advanced Inorganic Chemistry

■出版社
Wiley-Interscience

■発行年
1999年

■サイズ
26.2×18.8×6.3 cm(ハードカバー:1376頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
50年以上の歴史を誇る無機化学の教科書がコットン・ウィルキンソン無機化学。原著では「Advanced Inorganic Chemistry」というタイトルだが、邦訳されたものは第4版「」で改訂が止まって絶版となっているので、手に入れるなら必然的に最新の原著ということになる。この本の特徴は、周期表すべての元素の性質や反応性をまとめた貴重な本だということ。第4版辺りまでは、無機の理論や生物無機化学のテーマも取り扱っていたが、最新の第6版では総論部分はコンパクト化され、そのページの大半を各論の記述に当てている。かなり詳細な本なので、無機化学の初学者にはおすすめできない。上で紹介した同じ著者の「Basic Inorganic Chemistry」を通読した人が、さらに各論について理解を深めたいときに活用するのが正しい。なお、1999年の発行なので、それ以降に発見された元素の性質については、当然記述がない(とは言え、半減期が極めて短い放射性元素なので問題はないのだが)。数多くある無機化学教科書の、言わば集大成とも言える大作なので、専門であるならば持っておいて損はない。



Principles of Inorganic Chemistry (第1版)
理論重視の新しい無機化学テキスト

Principles of Inorganic Chemistry

■出版社
Wiley

■発行年
2015年

■サイズ
28.7×22.4×3.3 cm(ハードカバー:760頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
無機化学の教科書は昔から定番が決まっているが、この本は他書だと手薄になりがちな理論的アプローチを重視しているのが大きな特徴。元素の各論をバッサリとカットし、量子化学、分子の対称性、分光学、化学結合、配位子場理論、有機金属化学…と、無機化学総論を760ページのなかにぎっしりと詳細に盛り込んでいる。言うなれば、かつての名著「ヒューイ無機化学」のようなポジションであるが、カラフルで写真や図が豊富なので、比較的とっつきやすい本だろう。レベルがやや上級(学部3年~大学院1年)なので、薄くて読みやすい無機化学入門書を読んだあとの2冊目としておすすめしたい。前述したとおり、コットン・ウィルキンソンとは対照的に各元素の性質や反応などはほとんど記載されていないので、これは別の教科書で補おう。現代の無機化学テキストの新星と呼べる1冊だ。



評価の高いその他の名著
リー無機化学
こちらも古くから読まれている教科書。邦訳は第3版が最新だが、原著は1999年に出た第5版(Concise Inorganic Chemistry)が最新。今となっては特に優れているところはなく、化学結合のところに正しくない(古い知見に基づく)記述がある(超原子価化合物のd軌道の関与…etc)だが、分量が1冊分と軽めなので無機専門以外の者に適している。無機の学習をしておきたいけど、シュライバーやコットン(基礎)を通読するには荷が重い…という学生にちょうどいいサイズ。なにより邦訳が優れていて、読みやすいのも◎。内容は、どちらかといえば各論中心で理論の記述が少なめ。結晶&配位子場理論をもう少し詳しく扱ってくれると、もっと高い評価を与えたいのだが…。

ヒューイ無機化学 (上)
ヒューイ無機化学 (下)
このヒューイ無機化学も、昔から読まれている手堅い教科書。コットン基礎やシュライバー・アトキンスよりも上級の教科書だが、特徴はなんと言っても理論の記述が詳しいこと。そういう意味では、コットン・ウィルキンソンとは対照的な本である。一風変わった趣だが、手元にあると役に立つ。ただし、化学結合論に関する記述が古い知見に基づくものなので、これをメインの教科書にすると危険だから注意。今となっては、あくまで副読本として使うほうが無難だろう。ちなみに原著最新版は1997年に出版された第4版(Inorganic Chemistry: Principles of Structure and Reactivity)。原著にチャレンジするのも悪くない。

コットン・ウィルキンソン・ガウス基礎無機化学
これは、上で紹介したコットン・ウィルキンソン・ガウス無機化学の邦訳版。訳があまりよろしくないので、メインのコーナーで紹介しなかったが、取り扱っている内容は優れている。総論は学部学生が学ぶには十分の内容。シュライバー・アトキンスでやや手薄な感がある各元素の性質も、こちらは少し詳しく載っている。シュライバー・アトキンスと合わせて両方読めば完璧なのだが…。非常に普遍的な教科書なので、多くの大学院入試用にも使えるのもメリットか。

ほかには…
ハウスクロフト無機化学 〈上〉
ハウスクロフト無機化学 〈下〉
ハウス無機化学 〈上〉
ハウス無機化学 〈下〉
レイナーキャナム 無機化学
最近出版された新しい無機化学の教科書がある。ハウスクロフトはシュライバー無機化学とほぼ同レベルで、扱う内容も大きな差はない。これからの定番になりそうな1冊。ハウスは、固体化学についての記述が詳細。レイナーキャナムは各論中心の印象だ。



物理無機化学の教科書

物理無機化学(Physicalinorganic Chemistry)
物理化学と無機化学の境界領域の学問が物理無機化学。通常の無機化学の教科書では取り扱わない錯体の量子論的な取り扱い、分光学、群論などその範囲は広く、総合的に学べる定番の教科書というものは限られている。物理無機化学というタイトルの大著と、各論的な和書をいくつかご紹介しよう。



Physical Inorganic Chemistry (第1版)
「物理無機化学」を詳細に取り扱った2冊組の本格的テキスト

Physical Inorganic Chemistry: Principles, Methods, and ModelsPhysical Inorganic Chemistry: Reactions, Processes, and Applications


■出版社/原著出版社
Wiley

■発行年
2010年

■サイズ
24.1×16.3×2.9 cm(ハードカバー:536頁)
24.4×16.5×3.3 cm(ハードカバー:624頁)

■レベル
★★★★★(学部4年~研究者)

■ひとこと
無機化合物に物理化学(とくに量子化学)の面からアプローチして、分子構造、物性などを議論するのが物理無機化学。境界領域の学問で、あまり一般的ではないかもしれないが、日本でも名古屋大学などに研究室がある。この本は2冊組で、基礎編と発展編に分かれている。しかしどちらも専門的な内容なので、院生や研究者が対象だろう。トピックも、ほかの本には載っていないような興味深いものが多い。



評価の高いその他の名著
分子の対称性と群論
昔から読み継がれる対称性と群論の入門書。非常に苦手とする人が多いが、そんな人でもかなり丁寧にわかりやすく解説してくれる名著である。ボリュームこそ少ないが、配位子と金属の分子軌道についても詳細な記述があって一読の価値あり。物理無機化学の諸分野の基礎固めにはおすすめである。

量子論に基づく無機化学 -群論からのアプローチ-
群論からアプローチした物理無機化学の本。このレベルの本を読みこなせると、後々役立つはず。

配位化合物の電子状態と光物理 (複合系の光機能研究会選書)
錯体を量子論的に考えているのがテーマ。分光学、量子論、無機化学……これらを統括してまとめた興味深い1冊。

物質の対称性と群論
物理化学、無機化学で重要な概念が群論。苦手な人が多いこの分野をわかりやすく解説してくれる優秀な書で、評価の高い1冊。


固体化学の教科書

固体化学(Solid State Chemistry)
固体化学は、無機化学や物理化学の教科書で取り扱われることが多い分野。ここでは、本格的に固体化学を学びたい人向けの専門書を紹介したい。物性物理学との結びつきも強く、材料化学やナノテクノロジーへの応用も盛んな分野である。化学専門の人には難解な式が多く出てきてとっつきにくい領域だが、自分に合った本でしっかりと基礎を身に付けていこう。



Solid State Chemistry
and its Applications (第2版)

もっとも著名な固体化学テキストの改訂最新版!

Solid State Chemistry and its Applications

■出版社
Wiley

■発行年
2014年

■サイズ
24.4×19.6×2.8 cm(ペーパーバック:584頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
初版は、少し前から世界中で読まれてきた固体化学のバイブルだったが、これはその最新の版となる。日本でも講談社サイエンティフィクから「ウエスト固体化学入門」として、物理、化学、工学系の学生に親しまれてきた馴染み深い教科書であるが、今回はさらに発展的な内容を盛り込んで改訂された。



評価の高いその他の名著
固体化学
日本人著者による固体化学の入門書。固体の構造、反応、物性をコンパクトにまとめている。

ウエスト 固体化学入門 (講談社サイエンティフィク)
上で紹介した本の和書。こちらはひとつ版が古いが、日本語で学びたい人には嬉しい。

配位化学の教科書

配位化学(Coordination Chemistry)
配位化学(Coordination Chemistry)または錯体化学(Complex Chmeistry)は、金属錯体の性質や反応、または構造などを論じる無機化学の一大分野。一般的な無機化学の教科書や有機金属化学の教科書に詳しく記述があるので、改めて別なテキストを用意して勉強するというシチュエーションは少ないかもしれない。世界的に見ても、専門のテキストはさほど多くないが、ここでは最新の錯体化学をより深く学べる専門書を紹介していこう。



Introduction to
Coordination Chemistry

基礎から学べる配位化学の入門テキスト

Introduction to Coordination Chemistry (Inorganic Chemistry: A Textbook Series)

■出版社
Wiley

■発行年
2010年

■サイズ
24.4×18.8×1.8 cm(ペーパーバック:306頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
初歩的なことから、物理化学を用いた発展的理論まで幅広く取り扱っている本格的な配位化学の教科書。無機化学テキストの副読本として活用するのもいいかもしれない。なお、この本はWILEY無機化学テキストシリーズのなかの1冊である。



評価の高いその他の名著
配位化学―金属錯体の化学
邦訳されてる錯体および配位化学の有名な本がこちら。かなり古い本だが、よくまとまっている。ただし、無機化学の教科書以上のことは書かれていないので、この分野だけを特に学びたいというのでなければ、あまり意味がないかもしれない。あと配位子場理論についてほとんど触れられていないのがマイナスである。

生物無機化学の教科書

生物無機化学(Bioinorganic Chemistry)
無機化学と生化学の境界領域に存在する学問分野が生物無機化学である。ここ数十年の間で急速に発展し、生体内のさまざまな金属イオンの振る舞いなども明らかになってきた。比較的新しい学問領域だが、教科書は国内外問わず徐々に増えてきている。ここではそんな最新の生物無機化学の教科書を紹介する。



Bioinorganic Chemistry
Inorganic Elements in the Chemistry of Life (第2版)

最新のトピックスを盛り込んだ生物無機化学の改訂版が登場

Bioinorganic Chemistry -- Inorganic Elements in the Chemistry of Life: An Introduction and Guide (Inorganic Chemistry: A Textbook Series)

■出版社/原著出版社
Wiley

■発行年
2013年

■サイズ
24.4×18.8×2 cm(ペーパーバック:426頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
大学院生向けに書かれた生物無機化学の専門テキスト。およそ20年ぶりに改訂され、第2版となった。最近のトピックスや薬学、医学への応用にも触れており、総合的に学べる生物無機化学のバイブルと言えよう。



Bioinorganic Vanadium Chemistry (第1版)
バナジウムに焦点を当てた生物無機化学の本

Bioinorganic Vanadium Chemistry (Inorganic Chemistry: A Textbook Series)

■出版社
Wiley

■発行年
2008年

■サイズ
24.6×19.0×1.4 cm(ペーパーバック:224頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
ホヤなどの一部の生物ではバナジウムを体内に濃縮している。今、バナジウムは生物無機化学の世界でもっともホットなテーマのひとつ。この本では最新の研究結果が学べる希少な本。



評価の高いその他の名著
リパード・バーグ生物無機化学
比較的最近の学問領域ゆえ、生物無機化学の和書はそれほど多くない。もちろん簡易な概説本はたくさん出版されているものの、専門の学生がしっかり基礎から学ぶとなるとその数は限られる。このリパード・バーグは、日本語の本のなかでは読み応えのあるテキストで、世界的な評価も高い。原著は「Principles of Bioinorganic Chemistry」で、1994年の本だが現在でも購入可能である。

その他の無機化学関連書籍

その他の無機化学関連書籍
無機化学というのは物理化学や有機化学とは異なり、総合的な教科書をひと通り読んだ後にステップアップする本がほとんどない。しかし、無機化学関連の各論的な入門書は多数あるので、ここで一挙に紹介していく。



Superacid Chemistry (第2版)
世界でも希少な「超酸化学」の成書

Superacid Chemistry 

■出版社/原著出版社
Wiley-Interscience

■発行年
2009年

■サイズ
24.4×16.3×4.4 cm(ハードカバー:850頁)

■レベル
★★★★★(学部4年~研究者)

■ひとこと
超酸とは、硫酸や硝酸などよりも強い酸のことで、パラフィンを溶かすほどの強力な酸も知られている。そんな超酸化学について、この分野でノーベル化学賞を受賞したオラー教授が体系的にまとめあげた希少な1冊がこれ。今回は第2版となり、内容もさらに充実した。



Lanthanide and Actinide Chemistry (第2版)
ランタノイド・アクチノイド化学テキストの決定版

Lanthanide and Actinide Chemistry (Inorganic Chemistry: A Textbook Series)

■出版社
Wiley

■発行年
2006年

■サイズ
24.6×19×1.8 cm(ペーパーバック:280頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
無機化学のテキストではあまり詳細に触れられないランタノイドおよびアクチノイド元素。これらの最新研究結果を収録した格好の入門書がこれ。基礎から発展的内容まで幅広く網羅している。



Chirality in Transition Metal Chemistry (第1版)
「遷移金属化学のキラリティ」を学べる1冊

Chirality in Transition Metal Chemistry: Molecules, Supramolecular Assemblies and Materials (Inorganic Chemistry: A Textbook Series)

■出版社
Wiley

■発行年
2009年

■サイズ
24.6×19.0×1.5 cm(ペーパーバック:260頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
無機化学テキストシリーズの1冊。有機化学に比べて、無機化学のキラリティはあまり学習する機会がない。この本では遷移金属錯体の立体化学について詳しく学べる入門書。



Inorganic Structural Chemistry (第2版)
無機構造化学のテキストと言えばこの本

Inorganic Structural Chemistry (Inorganic Chemistry: A Textbook Series)


■出版社/原著出版社
Wiley

■発行年
2006年

■サイズ
24.1×18.7×1.5 cm(ペーパーバック:284頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
無機化学テキストシリーズの1冊。おろそかになりがちな無機化合物の構造。複雑でなかなか覚えられない人がいるかもしれない。そんな理解の助けとなるのがこのテキスト。昔から世界で読まれている名著である。



Mass Spectrometry of
Inorganic and Organometallic Compounds (第1版)

「無機化合物と有機金属の質量分析法」を学べる1冊

Mass Spectrometry of Inorganic and Organometallic Compounds: Tools - Techniques - Tips (Inorganic Chemistry: A Textbook Series)

■出版社/原著出版社
Wiley

■発行年
2005年

■サイズ
24.2×18.6×1.8 cm(ペーパーバック:292頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
質量分析法のテキストは数多いが、無機化合物と有機金属にフォーカスを当てて解説した本。



Structural Methods
in Molecular Inorganic Chemistry (第1版)

「分子構造解析の無機化学」を学べる1冊

Structural Methods in Molecular Inorganic Chemistry (Inorganic Chemistry: A Textbook Series)

■出版社/原著出版社
Wiley

■発行年
2013年

■サイズ
24.8×19.1×2.3 cm(ペーパーバック:496頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
無機構造解析の分光学的アプローチを論じた本。やや上級なレベル。

有機化学の教科書

有機化学(Organic Chemistry)
有機化学は物理化学、無機化学と並ぶ化学の3大分野のひとつ。しかも定性的な議論が可能なこともあって、数学が大の苦手……という人でもとっつきやすい科目であろう。有機化学には優れた教科書が非常に多く存在していて、バイブルといえる本も昔からたくさん存在している。ここでは総合的な「有機化学」の本のなかから個人的に良いと思われるものを挙げた。基本的に外国の著者のものばかりだが、邦訳されているものがほとんど。しかし、2冊目以降は原著を読んでレベルアップを図るのも手だ。



マクマリー
有機化学 (第8版)

有機化学の基本をとことん学べる優れた教科書

マクマリー有機化学〈上〉マクマリー 有機化学〈中〉マクマリー有機化学〈下〉
マクマリー有機化学問題の解き方

■出版社/原著出版社
東京化学同人/Brooks/Cole

■発行年
2013年

■サイズ
A5(ハードカバー:全1329頁)

■レベル
★★☆☆☆(学部1~3年)

■ひとこと
有機化学の登竜門。化学を専門とするならまずはここから……といえるほど定番中の定番で、多くの大学で指定されている教科書。今回第8版となったが、前の版と同じくカラフルで見やすく、初学者にも十分配慮されている。取り扱う内容は、網羅的で非常に優れており、通読も十分に可能。基本的な反応機構はしっかりと押さえられているほか、生化学分野(下巻)の記述もかなり詳しいのが長所である。ただし有機化学を専門とするなら、これだけでは足りないので、読み終えたらウォーレンにステップアップしていこう。原著はBrooks/Coleから「Organic Chemistry」が出ている。改訂のペースが速いのは、世界中で支持されている証拠だろう。



モリソン・ボイド
有機化学 (第6版)

永きにわたって読み継がれてきた古典的名著

有機化学〈上〉モリソン・ボイド 有機化学〈中〉有機化学〈下〉

■出版社/原著出版社
東京化学同人/Prentice-Hall

■発行年
1994年

■サイズ
A5(ハードカバー:全1194頁)

■レベル
★★★☆☆(学部2~4年)

■ひとこと
1959年に初版が発行されて以来、50年以上ものあいだ親しまれてきた有機化学における名著中の名著。アメリカの古い本なので言い回しは少しくどいが、記述が細かく今でも読む価値は十分にある。レベル的にはマクマリーよりもやや上で、中級教科書では珍しく軌道対称性やウッドワード・ホフマン則にも触れられているのが特色。その一方、反応機構の記述が不十分なのと練習問題の解答ないのが難点。分厚いので副読本として使いたいところだが、それではこの本の真価は発揮されない。全ページ余さず、しっかり読んでいきたい本である。原著「Organic Chemistry」はPrentice-Hallから出ていたが、すでに新書で手に入りにくくなっている。この先改訂は見込めないが、邦訳版が今でも新書で手に入る日本は恵まれた国かもしれない。



ウォーレン
有機化学 (第1版)

有機専門なら必携の上級テキスト

ウォーレン有機化学〈上〉ウォーレン有機化学〈下〉
ウォーレン有機化学〈上〉

■出版社/原著出版社
東京化学同人/Oxford University Press

■発行年
2003年(第2版は2015年~)

■サイズ
B5変(ソフトカバー:1580頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
基礎から発展的な内容まで取り扱う有機化学の上級テキスト。その特徴は、ほかの本ではあまり触れられていない有機金属、ヘテロ環、有機典型元素化学も取り扱っていること。これ1冊で現代の有機化学を広く俯瞰できる。また反応機構が詳細で、それまで暗記に頼っていた部分もしっかりと理解できる。難易度は高めなので、1冊目としては不向き。マクマリーなどの初級~中級テキストを読んだ後ステップアップしていく本である。下記には原著も紹介しているので、英語力を鍛えるならそちらを読むのもおすすめ。アマゾンでの評価も高く、世界中で支持されている現代有機化学のバイブルだ。なお、2015年に改訂されて第2版(上巻)が発売された。下巻は秋に発行予定。



Organic Chemistry (第2版)
意欲的な学習者にオススメしたいウォーレンの原著最新版!

Organic ChemistryOrganic Chemistry

■出版社
Oxford University Press

■発行年
2012年

■サイズ
27.6×19.8×4.8 cm(ペーパーバック:1234頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
ウォーレン有機化学待望の第2版。改訂によりページ数はやや減っている模様。学部3年~修士課程レベルの教科書の定番なので、ぜひ読んで欲しい1冊。価格が安く手に入れやすいのも◎。有機専門ならぜひ手元に置いておこう。



March's Advanced
Organic Chemistry (第7版)

有機化学者なら知らぬ者はいない有機化学の集大成

March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure

■出版社
Wiley-Blackwell

■発行年
2013年

■サイズ
26.1×18.4×7.0 cm(ハードカバー:2080頁)

■レベル
★★★★★(学部4年~研究者)

■ひとこと
有機化学の教科書の頂点に位置づけられる究極的な1冊がこの「マーチ有機化学」。2000ページに及ぶ集大成なので気軽に読破はできないが、手元にあれば利用価値は高い。内容は極めて高度で、初学者には不向き。ウォーレンを読み終えた人、院生および研究者が対象となる。原著は第7版が出たばかりだが、邦訳は丸善から出ている5版(マーチ 有機化学〈上〉―反応・機構・構造)がもっとも新しい。このレベルになってくると、最新のトピックスが充実した原著を手に入れるのがよい。



有機化合物のスペクトルによる同定法
MS,IR,NMRの併用 (第7版)

和書で買えるスペクトル解析ならこれ1冊で決まり!

有機化合物のスペクトルによる同定法―MS,IR,NMRの併用

■出版社
東京化学同人

■発行年
2006年

■サイズ
B5(ソフトカバー:483頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
有機構造解析の有名な教科書がこちら。かなり詳細な内容で、まったくのスペクトル初学者には荷が重い。通常の有機化学の教科書で簡単に原理を学んだあとに取り組みたい本。学部生だけでなく、大学院~研究者でも辞書的に使えるほどさまざまなスペクトルが掲載されている。ウォーレン有機化学とともに、有機専門ならばぜひ手元に置いておきたい。ちなみに原著は第8版が出ているが、邦訳が出るのはまだまだ先の模様。



評価の高いその他の名著
ボルハルト・ショアー現代有機化学〈上〉
ボルハルト・ショアー現代有機化学〈下〉
ボルハルト・ショアー現代有機化学問題の解き方
数多くある有機化学の教科書のなかでも、合成を重視した標準的テキスト。レイアウトもすっきりしていて見やすく、反応機構もそこそこ詳しい記述がある。演習問題も良質で、非常に教育的な本。ただ(重量的に)重いのが難点。このレベルの教科書は、持ち運びのしやすさも重要だと思う。

Organic Chemistry
最近アメリカで大変評判の高いのが「クライン有機化学」。購入してみたが、非常にカラフルで取っ付きやすい。昔ながらの教科書に慣れてる人は、あまりにカラフルなのは受け入れがたいが、最近の学生にはちょうどよいかもしれない。マクマリーなどと同程度のレベル。やさしい英語で書かれているので、同時に英語を勉強したい人にもよいだろう。

Advanced Organic Chemistry: Part A: Structure and Mechanisms
Advanced Organic Chemistry: Part B: Reaction and Synthesis
マーチ有機化学と並び称されるハイレベルな有機化学のテキストが「ケアリー」である。こちらはパートA、パートBと分冊となる。記述が充実している。

ほかには…
ジョーンズ有機化学〈上〉
ジョーンズ有機化学〈下〉
ジョーンズ有機化学 問題の解き方
ブラウン有機化学〈上〉
ブラウン有機化学〈下〉
ソレル有機化学〈上〉
ソレル有機化学〈下〉
ブルース有機化学〈上〉
ブルース有機化学〈下〉
ブルース有機化学 問題の解き方
ソロモンの新有機化学〈上〉
ソロモンの新有機化学〈下〉
ソロモン新有機化学・スタディガイド
パイン有機化学 1
パイン有機化学 2
フォックス・ホワイトセル有機化学〈1〉
フォックス・ホワイトセル有機化学〈2〉
フォックス・ホワイトセル有機化学〈3〉
このように、物理化学や無機化学と異なり、邦訳されてるものだけでも非常に多くの有機化学の教科書が存在する。なかでもジョーンズは反応機構が詳細と評判。パインは昔から使われている本だが、今だとやや古く感じる。いずれにしても、実際に自分で確認して読みやすいものを選ぶのがよい。


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