CHEMISTRY OF BOOK

化学を学ぶ人のための専門書まとめ

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無機化学の教科書

無機化学(Inorganic Chemistry)
無機化学の教科書の内容は、化学結合理論や無機結晶、金属錯体などについて考察をしていく総論と、各化合物の性質を学んでいく各論に大別できる。このバランスが各教科書によってバラバラだが、初学者は総論寄りの本から学んでいくのがベターだろう。各論は有機化学に比べて範囲が非常に広く、おそらく一度読んだだけで頭にすべて叩き込むのは難しいはず。まずは最初に使った教科書を読み込み、ある程度頭の中にインデックスをつけておいて、必要に応じて再度調べていけばおのずと理解が深まっていくだろう。有機化学に比べて書籍の数は少なく、定番の本はごく限られている。まずは自分にあった1冊を徹底的に学習していこう。



シュライバー・アトキンス
無機化学 (第4版)

世界で広く読まれる無機化学のスタンダードな教科書

シュライバー・アトキンス 無機化学〈上〉シュライバー・アトキンス 無機化学〈下〉

■出版社/原著出版社
東京化学同人/Oxford University Press

■発行年
2008年

■サイズ
A5(ハードカバー:全1296頁)

■レベル
★★★☆☆(学部2~4年)

■ひとこと
世界的に有名な無機化学の教科書。個人的にいろいろと読み比べてみたが、とりあえず邦訳されている本のなかではこれがベストと思われる。ページ構成もカラフルで、総論、各論の配分が適切(やや総論寄りだが学部向けにはこれくらいがちょうどよい)。とくに、第19章のdブロック金属錯体の電子構造については、類を見ないほど丁寧かつ簡潔に書かれている。すでに原著は第6版が出ているので早めの改訂が望まれているが、この第4版でも大きな問題はない。中級以上の教科書なので通読するのはやや大変だが、無機化学を基礎からきっちりと固めたい人はこれ一択となるだろう。



Inorganic Chemistry (第6版)
最新のトピックスも盛り込んだシュライバーの最新版

Inorganic Chemistry

■出版社
Oxford University Press

■発行年
2014年

■サイズ
27.4×21.8×3.2 cm(ペーパーバック:912頁)

■レベル
★★★☆☆(学部2~4年)

■ひとこと
上で紹介したシュライバー・アトキンス無機化学の原著が改訂された(現在は邦訳より2つ版が進んでいる)。今回からシュライバーの名前が落とされ、アトキンス博士ほか数名の著者が監修するスタイルとなったようだ。しかしながら、無機化学テキストのグローバルスタンダードであることは変わらない。こういう本を、学部の時代からコツコツと読んでいけば院に上がったときに相当な力となっているはず。英語も同時に学びたい人はぜひチャレンジを!



Basic Inorganic Chemistry (第3版)
シュライバーと双璧をなすもうひとつのスタンダード、通称「コットン基礎」

Basic Inorganic ChemistryBasic Inorganic Chemistry, Solutions Manual

■出版社
John Wiley & Sons Inc

■発行年
1994年

■サイズ
25.8×18.5×3.6 cm(ハードカバー:856頁)

■レベル
★★★☆☆(学部2~4年)

■ひとこと
「コットン・ウィルキンソン・ガウス基礎無機化学」として日本では培風館から邦訳第3版(基礎無機化学)が出ているが、訳がいまいち良くないので最新の原著を読むことを推奨する。また原著には章末問題の解答編も存在する。ちなみにタイトルにBasic(基礎)とあるが、これは易しいという意味ではなく、総論的な記述が多いことを示している。とくに配位子場理論などdブロック元素特有の理論や錯体反応について丁寧な記述があるのが特徴で、有機金属や生物無機化学に関するトピックも充実。学部レベルの講義や院試に向けた勉強ならこれ1冊で十分だろう。化学が専門なら、無機化学の教科書はシュライバー・アトキンスかこちらかの選択となるのではないだろうか。そしてこれをマスターしたら、下で紹介する「Advanced Inorganic Chemistry」を手に取ってみよう。



Advanced Inorganic Chemistry (第6版)
各元素についての記述が詳しい無機化学テキストの最高峰

Advanced Inorganic Chemistry

■出版社
Wiley-Interscience

■発行年
1999年

■サイズ
26.2×18.8×6.3 cm(ハードカバー:1376頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
50年以上の歴史を誇る無機化学の教科書がコットン・ウィルキンソン無機化学。原著では「Advanced Inorganic Chemistry」というタイトルだが、邦訳されたものは第4版「」で改訂が止まって絶版となっているので、手に入れるなら必然的に最新の原著ということになる。この本の特徴は、周期表すべての元素の性質や反応性をまとめた貴重な本だということ。第4版辺りまでは、無機の理論や生物無機化学のテーマも取り扱っていたが、最新の第6版では総論部分はコンパクト化され、そのページの大半を各論の記述に当てている。かなり詳細な本なので、無機化学の初学者にはおすすめできない。上で紹介した同じ著者の「Basic Inorganic Chemistry」を通読した人が、さらに各論について理解を深めたいときに活用するのが正しい。なお、1999年の発行なので、それ以降に発見された元素の性質については、当然記述がない(とは言え、半減期が極めて短い放射性元素なので問題はないのだが)。数多くある無機化学教科書の、言わば集大成とも言える大作なので、専門であるならば持っておいて損はない。



Principles of Inorganic Chemistry (第1版)
理論重視の新しい無機化学テキスト

Principles of Inorganic Chemistry

■出版社
Wiley

■発行年
2015年

■サイズ
28.7×22.4×3.3 cm(ハードカバー:760頁)

■レベル
★★★★☆(学部3年~大学院)

■ひとこと
無機化学の教科書は昔から定番が決まっているが、この本は他書だと手薄になりがちな理論的アプローチを重視しているのが大きな特徴。元素の各論をバッサリとカットし、量子化学、分子の対称性、分光学、化学結合、配位子場理論、有機金属化学…と、無機化学総論を760ページのなかにぎっしりと詳細に盛り込んでいる。言うなれば、かつての名著「ヒューイ無機化学」のようなポジションであるが、カラフルで写真や図が豊富なので、比較的とっつきやすい本だろう。レベルがやや上級(学部3年~大学院1年)なので、薄くて読みやすい無機化学入門書を読んだあとの2冊目としておすすめしたい。前述したとおり、コットン・ウィルキンソンとは対照的に各元素の性質や反応などはほとんど記載されていないので、これは別の教科書で補おう。現代の無機化学テキストの新星と呼べる1冊だ。



評価の高いその他の名著
リー無機化学
こちらも古くから読まれている教科書。邦訳は第3版が最新だが、原著は1999年に出た第5版(Concise Inorganic Chemistry)が最新。今となっては特に優れているところはなく、化学結合のところに正しくない(古い知見に基づく)記述がある(超原子価化合物のd軌道の関与…etc)だが、分量が1冊分と軽めなので無機専門以外の者に適している。無機の学習をしておきたいけど、シュライバーやコットン(基礎)を通読するには荷が重い…という学生にちょうどいいサイズ。なにより邦訳が優れていて、読みやすいのも◎。内容は、どちらかといえば各論中心で理論の記述が少なめ。結晶&配位子場理論をもう少し詳しく扱ってくれると、もっと高い評価を与えたいのだが…。

ヒューイ無機化学 (上)
ヒューイ無機化学 (下)
このヒューイ無機化学も、昔から読まれている手堅い教科書。コットン基礎やシュライバー・アトキンスよりも上級の教科書だが、特徴はなんと言っても理論の記述が詳しいこと。そういう意味では、コットン・ウィルキンソンとは対照的な本である。一風変わった趣だが、手元にあると役に立つ。ただし、化学結合論に関する記述が古い知見に基づくものなので、これをメインの教科書にすると危険だから注意。今となっては、あくまで副読本として使うほうが無難だろう。ちなみに原著最新版は1997年に出版された第4版(Inorganic Chemistry: Principles of Structure and Reactivity)。原著にチャレンジするのも悪くない。

コットン・ウィルキンソン・ガウス基礎無機化学
これは、上で紹介したコットン・ウィルキンソン・ガウス無機化学の邦訳版。訳があまりよろしくないので、メインのコーナーで紹介しなかったが、取り扱っている内容は優れている。総論は学部学生が学ぶには十分の内容。シュライバー・アトキンスでやや手薄な感がある各元素の性質も、こちらは少し詳しく載っている。シュライバー・アトキンスと合わせて両方読めば完璧なのだが…。非常に普遍的な教科書なので、多くの大学院入試用にも使えるのもメリットか。

ほかには…
ハウスクロフト無機化学 〈上〉
ハウスクロフト無機化学 〈下〉
ハウス無機化学 〈上〉
ハウス無機化学 〈下〉
レイナーキャナム 無機化学
最近出版された新しい無機化学の教科書がある。ハウスクロフトはシュライバー無機化学とほぼ同レベルで、扱う内容も大きな差はない。これからの定番になりそうな1冊。ハウスは、固体化学についての記述が詳細。レイナーキャナムは各論中心の印象だ。



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コメント

はじめまして

「ある程度頭の中にインデックスをつけ」とはどのようにやるのですか?

  • 2013/02/08(金) 17:37:47 |
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  • カフカ #-
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